1905 年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その3)
アインシュタインは座標系の設定に関わる重要な知見を得ました。複製のような座標系を2つ用意して互いに他に対して移動させてしまうと片方は座標系として使い物にならなくなってしまうというのはゆゆしき事態です。そこでそれをふまえて
3 座標および時間の変換理論:静止系から、それに対して等速度で並進運動をしている別の座標系へ
という節で、2つの座標系、『静止系』と『運動系』の考察をし、その座標変換式を導き出しています。
先ず、2つの座標系を次のように規定しています。硬い物質でできた3本の座標軸が、互いに直交するように原点から出ている座標系を2つ考えます。これらの座標系は X 軸が一致し、Y 軸と Z 軸はそれぞれ互いに平行になっているとします。そしてどちらの座標系にも硬い物差しと多数の時計が用意されているとします。ここで、それぞれの座標系に用意された物差しと時計は、すべてまったく同じ構造、同じ性能であるとします。
次に2つの座標系のもう少し詳しい位置関係を見ていきます。一方の移動している運動系 k 系の原点は、静止している静止系 K 系の X 軸上を X 軸の正の方向に向かって一定の速度 v で移動しているとします。もちろん、運動系 k 系の3つの軸と、この座標系に備え付けた物差しと時計もその速度で移動するものとします。静止系 K 系の各時刻に対し、運動系 k 系の3本の軸の位置が決まります。初めに規定した2つの座標系の位置関係の対称性から、静止系 K 系の各時刻において、運動系 k 系の座標軸は静止系 K 系の座標軸とつねに平行を保ちながら移動しているとします。
ここで論文にはありませんが、互いに平行を保っている座標軸を、静止系 K 系では X 軸、Y 軸、Z 軸とし、運動系 k 系ではそれぞれ順に Ξ 軸、Η 軸、Ζ 軸と名付けることにします。
次に空間の測定を考えます。静止系 K 系では静止している物差しを使います。直交座標系の場合、空間の一点に空間座標値を割り振るには、その点を通り、3本の座標軸と垂直に交わる平面を見つけて、それぞれの平面が3本の軸と交わる所と原点との位置関係を静止系 K 系に静止している物差しで計測することによって、静止系 K 系での空間座標の値、(x,y,z) が特定されます。同様に運動系 k 系では k 系と共に運動している物差しを使います。やはり空間の一点に空間座標値を割り振るには、その点を通り、3本の座標軸と垂直に交わる平面を見つけて、それぞれの平面が3本の軸と交わる所と原点との位置関係は運動系 k 系と共に運動している物差しで計測することによって、運動系 k 系での空間座標の値、(ξ,η,ζ) が特定されます。
さらに時間の測定ですが、静止系 K 系に静止している時計を第1節の光を使った方法で同期させます。そして空間の一点にある時計で時刻 t を計測します。運動系 k 系で運動系 k 系と共に運動している時計についても第1節の光を使った方法で同期させます。そして空間の一点の位置にある時計で時刻 τ を計測します。第2節で分かったように予め静止系 K 系と運動系 k 系を同じように準備した後で、運動系 k 系を静止系 K に対して移動させると、運動系 k 系の観測者にとっては時計が同期していないので、座標系としては使い物にならなくなるからです。
これで静止系 K 系で起こった出来事の場所と時刻を完全に指定する (x,y,z,t) の値の組すべてに対し、運動系 k 系でのその出来事の場所と時刻を完全に指定する (ξ,η,ζ,τ) の値の組が存在することになります。そしてアインシュタインの問題意識はこれらの量を関係づける関係式を求めるこにと移っていきます。
まずはじめに,求めるべき方程式は明らかには,一次方程式でなければならない.なぜなら時間と空間はいすれも均質だと考えられるからである.
時間と空間の一様性のために、静止系 K 系での値の組 (x,y,z,t) と運動系 k 系での値の組 (ξ,η,ζ,τ) を関係づける式は、一次式でなければならないと指摘です。この点については、計算で手短に示すことが出来ます。ある座標系の時間座標 x^0 = Vt と空間座標 x^1 = x,x^2 = y,x^3 = z を一括して x^μ (μ = 0,1,2,3) と書き、別の座標系の時間座標 ξ^0 = Vτ と空間座標 ξ^1 = ξ,ξ^2 = η,ξ^3 = ζ を一括して ξ^ν (ν = 0,1,2,3) と書いて、
ξ^ν = f^ν(x) (ν = 0,1,2,3)
という関係式を仮定します。ここで時間と空間は一様であるとすれば、この関係式は座標原点を何処に選んでも成立するはずです。つまり座標系には並進対称性があることになります。そこで任意にもう一つ別の座標点を選んで関係式を
ξ'^ν = f^ν(x') (ν = 0,1,2,3)
と書いて、座標値の差を考えます。
ξ^ν - ξ'^ν = f^ν(x) - f^ν(x')
この左辺の関数は,座標値の差の関数でなければなりません。
f^ν(x) - f^ν(x') = g^ν(x - x')
これを x^μ について微分すると、
(∂f^ν/∂x^μ)(x) = (∂g^ν/∂x^μ)(x - x') (μ,ν = 0,1,2,3)
ですがさらに x'^σ について微分すると左辺は x のみの関数なので、零となるはずです。
(∂^2g^ν/∂x^μ∂x'^σ)(x - x') = 0
合成関数の微分を使うと、
(∂^2g^ν/∂x^μ∂x'^σ)(x - x') = -(∂^2g^ν/∂x^μ∂x^σ)(x - x') = 0
となるので、関係式 f^ν(x) について
(∂^2f^ν/∂x^μ∂x^σ)(x) = 0
となり、これを積分すれば
f^ν(x) = Λ^ν_μx^μ + a^ν (ν = 0,1,2,3)
となって一次変換式であることが示されます。
話題を、(x,y,z,t) の値の組と (ξ,η,ζ,τ) の値の組を関係づけることに戻します。アインシュタインは、運動系 k 系で静止している点の座標を考えることから始めます。x' = x - vt とおいて、数値の組 (x',y,z) を運動系 k 系の点の座標と考えると、明らかにこの点の座標は時間に依存しないと述べています。このことをちょっと回りくどく考えてみます。
(x,y,z,t) の数値の組から数値
x' = x - vt
を作り、運動系 k 系の空間座標点
ξ = x' = x - vt, η = y, ζ = z
に着目します。逆にこれを静止系 K 系の空間座標点と考え直してみれば、
x = ξ + vt, y = η, z = ζ
となりますが、t を時刻と考えれば,この空間座標点は静止系 K 系の X 軸の正の方向に速度 v で移動していることになります。運動系 k 系は静止系 K 系に対して X 軸方向に速度 v で移動していますから、今着目しているこの空間座標点は運動系 k 系に対して静止していることになります。つまり、運動系 k 系の空間座標点
ξ = x' = x - vt, η = y, ζ = z
は、運動系 k 系で静止している空間座標点なので運動系 k 系の時間に依存しないことになります。
さて、運動系 k 系に対して静止している座標点 (ξ,η,ζ) の時間 τ を、x',y,z,t の関数として求めることを考えます。ところで運動系 k 系に静止している座標点に置かれている時計は、系の設定時にすべて同期させたはずでした。アインシュタインは、この事実を使うと k 系の時刻が必ず満たすべき等式を得ることが出来ると考えました。
今、運動系 k 系の原点 (0,0,0) と Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) の間で光を往復させるという思考実験を考えます。運動系 k 系の原点にある時計が時刻 τ0 を示したとき、原点 (0,0,0) にある光源から Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) に向かって光を照射します。固定点にある時計が時刻 τ1 のとき原点からの光が固定点に到達し、その瞬間に原点に向けて反射されます。そして原点にある時計が時刻 τ2 のとき、光が原点にある光源に戻ったとします。ここでは固定点でることを強調するために論文にある x' は用いずに表記にしました。運動系 k 系の座標点に置かれた時計は k 系の設定時に同期させていましたから、時刻の関係として
τ1 - τ0 = τ2 - τ1
であり、
(1/2)(τ0 + τ2) = τ1
が従います。アインシュタインはこれが運動系 k 系に静止している時計から得られる情報のすべてだとしています。
次に為すべきことは運動系 k 系の (ξ,η,ζ,τ) とそれに対応する静止系 K 系 の (x,y,z,t) を関係づけることです。そこで、運動系 k 系の原点から光が照射される現象は、静止系 K 系では時刻 t0 に座標点 (x0,y0,z0) から光が照射されると観測され、光が運動系 k 系の Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) に到達して反射される現象は、静止系 K 系で時刻 t1 に座標点 (x1,y1,z1) に光が到達して反射されると観測され、光が再び運動系 k 系の原点に戻る現象は静止系 K 系で時刻 t2 に座標点 (x2,y2,z2) に光が到達すると観測されるものとします。
これによって、静止系 K 系と運動系 k 系とで計測値の間に次のような関係が成り立つことが分かり、運動系 k 系の時刻 τ0,τ1,τ2 の値を関数 τ(x',y,z,t) の関数値として表すことができます。数値の組の対応関係から
x0 = ξ + vt0 = vt0 ∴ x' = x0 - vt0 = 0
y0 = η = 0
z0 = ζ = 0
となりますので、
τ0 = τ(0,0,0,t0)
です。また、
x1 = ξ +vt1 = L + vt1 ∴ x' = x1 - vt1 = L
y1 = η = 0
z1 = ζ = 0
となりますので、
τ1 = τ(L,0,0,t1)
です。さらに
x2 = ξ + vt2 = vt2 ∴ x' = x2 - vt2 = 0
y2 = η = 0
z2 = ζ = 0
となりますので、
τ2 = τ(0,0,0,t2)
です。従って、運動系 k 系の時計の同期条件は
(1/2){τ(0,0,0,t0) + τ(0,0,0,t2)} = τ(L,0,0,t1)
となります。次に運動系 k 系の Ξ 軸上での光の伝搬の様子から、静止系 K 系の時刻 t0,t1,t2 の関係を見出します。
光が k 系の原点 (0,0,0) から Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) まで伝搬するのに要する時間は t1 - t0 で、光が伝搬する距離は原点から Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) までの距離に Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) が K 系で移動する距離 v(t1 - t0) を加えた距離ですから、K 系に光速度不変の原理を適用して
V(t1 - t0) = L + v(t1 - t0)
となります。従って
t1 - t0 = L/(V - v)
です。これより
τ(L,0,0,t1) = τ{L,0,0,t0 + L/(V - v)}
であることがわかります。
また、光が k 系の Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) から原点 (0,0,0) まで伝搬するのに要する時間は t2 - t1 で、光が伝搬する距離は原点から Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) までの距離に k 系の原点が K 系で移動する距離 v(t2 - t1) を減じた距離ですから、K 系に光速度不変の原理を適用して
V(t2 - t1) = L - v(t2 - t1)
となります。従って
t2 - t1 = L/(V + v) ∴ t2 = t1 + L/(V + v) = t0 + L/(V - v) + L/(V + v)
です。これより
τ(0,0,0,t2) = τ{0,0,0,t0 + L/(V - v) + L/(V + v)}
であることがわかります。これらを運動系 k 系の時計は同期条件に代入すれば、アインシュタインが見出した
(1/2)[τ(0,0,0,t) + τ{0,0,0,t + L/(V - v) + L/(V + v)}] = τ{0,0,0,t + L/(V - v)}
が従いいます。ここで、t0 = t と書いています。こうして、関数 τ が満たすべき等式が、偏微分方程式の一部を見出すことが出来る形に変形できました。
関数 τ に関する偏微分方程式を見出すために、運動系 k 系の Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) は自由に選べることを利用して、L を無限小量に選び、関数 τ を
L = 0
の周りにテーラー展開して、関数 τ(t,x',y,z) が満たすべき偏微分方程式を見つけることにします。実際両辺を L の1次の項まで評価すれば
2L(∂τ/∂x')(0,0,0,t) + 2τ(0,0,0,t) + 2L{1/(V - v)}(∂τ/∂t)(0,0,0,t)
= τ(0,0,0,t) + τ(0,0,0,t) + L{1/(V - v) + 1/(V + v)}(∂τ/∂t)(0,0,0,t)
となるので、必要条件として L の1次の項に関する等式
2(∂τ/∂x')(0,0,0,t) = {1/(V + v) - 1/(V - v)}(∂τ/∂t)(0,0,0,t)
が得られます。そしてこれを整理すると関数 τ(t,x',y,z) が満たすべき偏微分方程式
(∂τ/∂x') + {v/(V^2 - v^2)}(∂τ/∂t) = 0
を見出すことが出来ました。
ですがこれだけでは不十分です。運動系 k 系の座標軸 Η 軸と Ζ軸 の方向についても同様の思考実験で考察を加え、静止系 K 系の変数 y,z に関する方程式を見出す必要があるからです。
先ず、Η 軸について考えてみます。運動系 k 系の原点 (0,0,0) と Η 軸上の座標点 (0,L,0) で光を往復させるという思考実験を考えます。運動系 k 系の時刻 τ0 に原点 (0,0,0) から Η 軸方向に光を照射し、時刻 τ1 に Η 軸上の座標点 (0,L,0) にある固定点で反射させて、時刻 τ2 には光が原点に戻るとします。運動系 k 系の座標点に置かれた時計は k 系の設定時に同期させていましたから、時刻の関係として
τ1 - τ0 = τ2 - τ1
であり、
(1/2)(τ0 + τ2) = τ1
が従います。次に為すべきことは運動系 k 系の (ξ,η,ζ,τ) とそれに対応する静止系 K 系 の (x,y,z,t) を関係づけることです。これを静止系 K 系では、時刻 t0 に (x0,y0,z0) から光を照射し、時刻 t1 に (x1,y1,z1) に到達した光が反射されて、時刻 t2 に点 (x2,y2,z2) 、光が原点に戻ると計測されたとしてみます。
これによって、静止系 K 系と運動系 k 系とで計測値の間に次のような関係が成り立つことが分かり、運動系 k 系の時刻 τ0,τ1,τ2 の値を関数 τ(x',y,z,t) の関数値として表すことができます。数値の組の対応関係から
x0 = ξ + vt0 = vt0 ∴ x' = x0 - vt0 = 0
y0 = η = 0
z0 = ζ = 0
となりますので、
τ0 = τ(0,0,0,t0)
です。また、
x1 = ξ + vt1 = vt1 ∴ x' = x1 - vt1 = 0
y1 = η = L
z1 = ζ = 0
となりますので、
τ1 = τ(0,L,0,t1)
です。さらに
x2 = ξ + vt2 = vt2 ∴ x' = x2 - vt2 = 0
y2 = η = 0
z2 = ζ = 0
となりますので、
τ2 = τ(0,0,0,t2)
です。従って、運動系 k 系の時計の同期条件は
(1/2){τ(0,0,0,t0) + τ(0,0,0,t2)} = τ(L,0,0,t1)
となります。
次に運動系 k 系の Ξ 軸上での光の伝搬の様子から、静止系 K 系の時刻 t0,t1,t2 の関係を光の伝搬の様子から見出します。光が運動系 k 系の原点 (0,0,0) から Η 軸上の固定点 (0,L,0) まで伝搬するのに要する静止系 K 系での時間は t1 - t0 です。三平方の定理によって、光が伝搬する距離の2乗は、静止系 K 系からみた光源 (0,0,0) と Η 軸上の固定点 (0,L,0) までの距離の2乗と Η 軸上の固定点 (0,L,0) が静止系 K 系で移動する距離 v(t1 - t0) の2乗を加えたものに一致しますから、静止系 K 系に光速度不変の原理を適用して
V^2(t1 - t0)^2 = L^2 + v^2(t1 - t0)^2
となります。従って
t1 - t0 = L/√(V^2 - v^2)
です。これより
τ1 = τ{0,L,0,t0 + L/√(V^2 - v^2)}
であることがわかります。また、光が運動系 k 系の Η 軸上の固定点 (0,L,0) から原点 (0,0,0) まで伝搬するのに要する静止系 K 系での時間は t2 - t1 です。再び三平方の定理によって、光が伝搬する距離の2乗は、運動系 k 系でみた Η 軸上の固定点 (0,L,0) から光源 (0,0,0) までの距離の2乗と光源 (0,0,0) がさらに K 系で移動する距離 v(t1 - t0) の2乗を加えたものに一致しますから、静止系 K 系に光速度不変の原理を適用して
V^2(t2 - t1)^2 = L^2 + v^2(t2 - t1)^2
となります。従って
t2 - t1 = L/√(V^2 - v^2) ∴ t2 = t1 + L/√(V^2 - v^2) = t0 + 2L/√(V^2 - v^2)
です。これより
τ2 = τ{0,0,0,t0 + 2L/√(V^2 - v^2)}
であることがわかります。
さて、運動系 k 系の座標点に置かれた時計は同期しているので
τ1 - τ0 = τ2 - τ1
が従い、
(1/2)(τ0 + τ2) = τ1
が成り立ちます。即ち
(1/2)[τ(0,0,0,t) + τ{0,0,0,t + 2L/√(V^2 - v^2)}] = τ{0,L,0,t + L/√(V^2 - v^2)}
です。ここでまた、t0 = t と書いています。
これで関数 τ が満たすべき偏微分方程式の一部を見出すことが出来ます。運動系 k 系の Ξ 軸上の固定点 (L,0,0) は自由に選べるので、今、L を無限小量として関数 τ を
L = 0
の周りにテーラー展開して、関数 τ(x',y,z,t) が満たすべき偏微分方程式を見つけることが出来ます。実際両辺を L の1次の項まで評価すれば関数 τ(x',y,z,t) が必ず満たさなければならない関係式を得ることが出来ます。
2τ(0,0,0,t) + 2L(∂τ/∂y)(0,0,0,t) + {2L/√(V^2 - v^2)}(∂τ/∂t)(0,0,0,t)
= τ(0,0,0,t) + τ(0,0,0,t) + {2L/√(V^2 - v^2)}(∂τ/∂t)(0,0,0,t)
となるので、必要条件として L の1次の項に関する等式
(∂τ/∂y)(0,0,0,t) + {1/√(V^2 - v^2)}(∂τ/∂t)(0,0,0,t)
= {1/√(V^2 - v^2)}(∂τ/∂t)(0,0,0,t)
が得られます。そしてこれを整理すると関数 τ(x',y,z,t)が満たすべき偏微分方程式
(∂τ/∂y) = 0
を見出すことが出来ました。
同様に、Ζ 軸についても同じ思考実験を考えることができます。運動系 k 系の原点 (0,0,0) と Ζ 軸上の座標点 (0,0,L) で光を往復させるという思考実験です。運動系 k 系の時刻 τ0 に原点 (0,0,0) から Ζ 軸方向に光を照射し、時刻 τ1 に Ζ 軸上の座標点 (0,0,L) にある固定点で反射させて、時刻 τ2 には光が原点に戻るとします。幾何学的な対称性から Η 軸の場合とまったく同様の計算で、関数 τ(x',y,z,t)が満たすべき偏微分方程式
(∂τ/∂z) = 0
を見出すことが出来ました。
以上の計算で得られた関数 τ(x',y,z,t) が満たすべき偏微分方程式を改めてまとめると
(∂τ/∂x') + {v/(V^2 - v^2)}(∂τ/∂t) = 0
(∂τ/∂y) = 0
(∂τ/∂z) = 0
となります。
これらの偏微分方程式を頼りに、関数 τ(x',y,z,t) を見つけ出すのですが、随分長くなりましたので、ここで一段落とし、続きは次回の投稿にゆずりたいと思います。