アルベルト・アインシュタインの論文を読む

アインシュタインの論文に関する独断と偏見に満ちた読後報告です。

2021年10月に書かれた記事

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 B 電気力学の部(その4)

     標記論文の B 電気力学の部 7 ドップラーの原理と光行差の理論 という節に進みます。静止系 K 系の原点から遠く離れたところにある電気力学的な波源、つまり電磁波の光源を考えます。その光源から放出される電磁波は、静止系 K 系の原点を含む空間領域では十分な精度で、 X = X0 sinΦ,  Y... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 B 電気力学の部(その3)

     標記論文の B 電気力学の部 6 真空に対するマックスウェル-ヘルツの方程式の変換.磁場中での運動によって生じる起電力の性質について という節の続きをさらに読んでいきます。真空中のマックスウェル-ヘルツの方程式が静止系 K 系から運動系 k 系へと座標変換されるのにともない、静止系 K 系での電... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 B 電気力学の部(その2)

     標記論文の B 電気力学の部 6 真空に対するマックスウェル-ヘルツの方程式の変換.磁場中での運動によって生じる起電力の性質について という節の続きを読んでいきます。アインシュタインは真空中のマックスウェル-ヘルツの方程式を静止系 K 系 (x,y,z,t) で (1/V)(∂X/∂t) = (... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 B 電気力学の部(その1)

     いよいよ本論の核心部分です。『特殊相対性原理』と『光速度不変の原理』に基づく運動学の法則を電気力学に応用します。標記論文の B 電気力学の部を読んでいきます。 アインシュタインは 6 真空に対するマックスウェル-ヘルツの方程式の変換.磁場中での運動によって生じる起電力の性質について という節で,... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その7)

     標記論文の第5節までで『特殊相対性原理』と『光速度不変の原理』の2つの基本原理に従い、いくつかの運動学的な考察がなされました。そのなかで、静止系 K 系に対して運動系 k 系が一様な速度 u で移動しているとき、静止系 K 系の量 (x,y,z,t) を運動系 k 系の量 (ξ,η,ζ,τ) に... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その6)

     『特殊相対性原理』と『光速度不変の原理』の2つの基本原理に従えば、運動している物体は運動方向に収縮し、運動している時計は遅れるという結果に導かれました。さらに速度を加え合わせることについても、単純な和にはならないことが示されています。 5 速度の加法定理 という節を読みます。  静止系 K 系の... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その5)

     後に特殊ローレンツ変換、ローレンツブースト変換と呼ばれる変換式を導出できました。アインシュタインはこの変換式を利用すると、時間と空間に関してどのような知見が得られるのかをまとめています。また、標記論文の 2 長さと時間の相対性 という節では具体的に述べていなかった rAB に相当するものについて... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その4)

     標記論文の 3 座標および時間の変換理論:静止系から、それに対して等速度で並進運動をしている別の座標系へ という節の半ばまで読み進めてきました。そして、関数 τ(x',y,z,t) が満たすべき偏微分方程式 (∂τ/∂x') + {v/(V^2 - v^2)}(∂τ/∂t) = 0 (∂τ/∂y... 続きをみる

  • 1905 年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その3)

     アインシュタインは座標系の設定に関わる重要な知見を得ました。複製のような座標系を2つ用意して互いに他に対して移動させてしまうと片方は座標系として使い物にならなくなってしまうというのはゆゆしき事態です。そこでそれをふまえて 3 座標および時間の変換理論:静止系から、それに対して等速度で並進運動をし... 続きをみる

  • 1905年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その2)

     なんとか第1節を読み終えました。アインシュタインの文章は一つ一つの事柄を丁寧に積み上げていく論証になっていました。そう感じると同時に行間をきちんと読んでいかないと、思考過程を正しく追うことが出来ないのではないかと肝に銘じました。教科書を読むのと生の論文を読むのとでは、追うべき行間の深さのようなも... 続きをみる

  • 1905年の論文「運動物体の電気力学」 A 運動学の部(その1)

     なんとか序論は読み終えました。次はいよいよ本論です。標記論文の A 運動学の部を読んでいきます。  アインシュタインは 1 同時性の定義 という節で、座標系に対する詳細な考察を経て2つの時計の同期を定義しています。  先ず『静止系』と呼ばれる座標系を導入します。この座標系はニュートンの力学方程式... 続きをみる

  • 1905年の論文「運動物体の電気力学」序論

     大きなことを言って打ち上げ花火を盛大にぶちかましただけでは格好が悪いので、なんとか論文を読み進めてまとめを投稿したいと思っていたのですが、恥ずかしながらすでに音を上げています。日本語訳ではあってもひとりだけで原著論文を読むのは難解です。幸いアインシュタインの文章と直接対決するのではなく、訳者の見... 続きをみる

  • 事の起こり

     私は、筑摩書房の書籍 アインシュタイン論文選「奇跡の年」の5論文 アルベルト・アインシュタイン 著 ジョン・スタチェル 編  青木薫 訳 筑摩書房(ちくま学芸文庫) 2011年 でアインシュタインの論文「運動物体の電気力学」を読む機会を得ました。特殊相対性理論に関する彼の有名な第1論文です。この... 続きをみる