アルベルト・アインシュタインの論文を読む

アインシュタインの論文に関する独断と偏見に満ちた読後報告です。

余談(その2)

 アインシュタインの1905年の論文「分子の大きさを求める新手法」は計算が複雑でなかなか読み進むことが出来ません。手強いです。でも副産物を得ました。球面調和関数とグリーン関数です。ラプラス・ポワソンの方程式の解法と調和関数を勉強しました。


 さて、SI単位系では点電荷 eδ(ξ, η, ζ) が作る電位はクーロンポテンシャル


φ(x, y, z) = -(1/4πε_0)(e/r)


r = √{(x - ξ)^2 + (y - η)^2 + (z - ζ)^2}


で与えられます。そして電荷分布 ρ(x, y, z) が作る電位はラプラスポワソンの方程式


△φ(x,y,z)=-(ρ/ε_0)


の解として与えられますが、また、点電荷 ρ(ξ, η, ζ)dξdηdζ が作り出すクーロンポテンシャル


φ(x,y,z) = (1/4πε_0) ∫∫∫ {ρ(ξηζ)/r} dξdηdζ


を重ね合わせて表すことが出来ます。クーロンポテンシャルはグリーン関数そのものです。


 そこで次のようなことを考えました。暴に言えば、電荷とそれが及ぼす効果は加法に従うということです。電磁相互作用のチャージとは古典的にはそういうものなのでしょう。ではその他の相互作用のチャージはどうでしょうか。例えば量子論のハイパーチャージやフレーバーやカラーもそうでしょうか。目で見て分かる形ではそうは思えません。しかし、クォーク模型が一般的になる以前は、ハドロンに加算的量子数を割り振っていました。


 考えてみるとウィークアイソスピンとカラーは、電荷とはひと味違うゲージ荷のような気がします。荷電粒子間で光子を交換してを電磁相互作用します。しかし光子は電荷を持たない素粒子なので、荷電粒子間で電荷が交換されることはありません。それに対して弱い相互作用と強い相互作用はどうでしょうか。クォークの世代間の混合やレプトンの世代間の混合を考えず、ゲージ粒子のワインバーグ角の混合も考えないで見てみましょう。


 SU(2)ゲージ理論での弱い相互作用はどうでしょうか。Wはウィークアイソスピン ±1 を持ち、W_0 はウィークアイソスピン 0 を持ちます。クォークやレプトンは W を交換するとウィークアイソスピン


+1/2 ←→ -1/2


が入れ替わり、フレーバーが変化しますが、しかし、W_0 を交換しても


+1/2 ←→ -1/2


が入れ替わることはなく、フレーバーは変化しません。ウィークアイソスピンが


+1/2 ←→ -1/2


と入れ替わることがないのであれば、フレーバーは変化せず、W_0 は電荷を運ばないので、相互作用としては光子と全く同じ事になります。


  SU(3)ゲージ理論の強い相互作用はどうでしょうか。グルーオンはカラーを持ちます。クォークはグルーオンを交換するとカラーが変化します。グルーオンはカラーだけを変化させるので、W のように電荷を運ぶことはありません。


 さて、電磁相互作用と核力の相互作用では力を媒介する粒子に定性的な違いがあることが分かりましたが、このブログの一貫した方針でもある独断と偏見によれば、これは可換ゲージ理論と非可換ゲージ理論の違いでもあるように思われます。

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