アルベルト・アインシュタインの論文を読む

アインシュタインの論文に関する独断と偏見に満ちた読後報告です。

1916年の論文「一般相対性理論の基礎」(その6)

 前節では共変テンソルの共変微分について考察がなされました。反変テンソルや混合テンソルの共変微分については、次節で論じられているテンソル解析の中で述べられています。そこで第11節 11 特別な重要性をもったいくつかの場合 を読みます。アインシュタインは、この節でテンソルに関する種々の微分演算について考察していて、まず基本テンソルに関する補助定理について述るとしています。それは後によく用いることに…

1916年の論文「一般相対性理論の基礎」(その5)

 前節では線素の平方を与える基本テンソル g_μν について詳しく考察しました。線素の平方は隣接する時空点の関係を示すものです。次節では離れた時空点を結ぶ測地線について考察をします。第9節 9 測地線の方程式、粒子の運動 を読みます。線素 ds はスカラーで隣接する2点の距離ともいうべき量で、座標系とは独立に定義され、座標変換で変わらない量です。4次元連続体の2点 P_1 と P_2 の間に、∫…

1916年の論文「一般相対性理論の基礎」(その4)

 第5節では、テンソルの加法と減法の規則について述べられていましたが、第7節 7 テンソルの乗法 ではテンソルの乗法について述べられています。アインシュタインはまずテンソルの外積について述べています。n 階のテンソルの成分と m 階のテンソルの成分を用いて、一方のテンソルの成分に他方のテンソルの各成分を掛けることによって n+m 階のテンソルの成分を得ることができます。例えば種々のテンソル A …

1916年の論文「一般相対性理論の基礎」(その3)

 アインシュタインは一般共変性の要請を定式化するために数学を準備し始めます。 B 一般的な共変方程式の形成に対する数学的補助手段 を読みます。一般相対性の仮定は私たちに、物理学の方程式は座標 x_1,x_2,x_3,x_4 の任意の変換に対して共変であるべきであるという要請に導くことを見てきました。そこで次に、どの程度一般な共変方程式を見出しうるのかということを考えることにします。これは必然的に…

1916年の論文「一般相対性理論の基礎」(その2)

 前節では、慣性の法則が成り立つような座標系 K 系に対して第2の座標系 K' を考え、他の物質から十分遠く離れた物質が形作る物体を座標系 K' が K に対して一様に加速されている並進運動をする場合と、K に対して加速はしていないが一様な重力の影響下にある場合を比較して、自然現象の物理学的な記述に対して座標系の資格について考えました。次に第3節 3 時空連続体、自然の一般法則を表わす方程式に対…